Dear diaryブロードウェイのベンチ子供の頃、学校へ通うのに、いつもその前を通って行きました。リバーサイド・ドライブに遊びに行くときも、そこを通りました。友達と映画に行くときも、お買い物に行くときも、そのベンチの前を通りました。教師になって職場の学校へ通うときも、そこを通りました。子供ができて、乳母車を押して、ヨチヨチ歩きの子供の手をとって、そこを通りました。郊外から両親が訪ねてくるとき駅まで迎えに行...
Dear Diary:土曜日の午後、ブルックリンの有名なヴィンテージ物の古着屋さんの中をのぞいてみました。店内の品物をあれこれとながめていたら、ちょっと年配のお客さんが、お店の人に声をかけて質問しているのが耳に入りました。「ねえ、ちょっとお尋ねしたいのですけど、これと同じで、もう少し大きめのサイズのものないかしら?」、応対したのは、このお店のオーナーで、とても趣味がよくて、元気で明るい女性です。「ああ、ごめ...
Dear Diary:私は長年、長距離走をやっている。もうずい分いい年になるのだが走っている時は自分の年齢を意識するようなことはない。もちろん、昔のようなスピードで走ることは無理だが、レースに参加した時など、大勢の若くて健康的なランナーたちに交じって走っていると、私の描く自分の脳内イメージは、彼らと少しも変わらぬランナーの一人だ。しかしながら、この間、ブルックリン・ハーフ・マラソン大会に参加したとき、自分の...
Dear Diary:去年の夏のことでした。マンハッタンの4番街を友人と二人で、手をつないで歩いていた時のことです。通りがかりの人が立ち止まって、私たちに声をかけてきました、「こりゃ、素晴らしい、一体どうすれば、そんなに長い間仲良く連れ添ってこられるんです!?」、その人に向かって、私たちはにっこりと笑顔をお返ししました。けれどもそれ以上は何もお返事しないでそのまま通り過ぎました。なぜなら、私たち二人は別にそん...
Dear Diary:ニューヨーカーって、何て素敵な人たちなんでしょう!イースト70番通りの郵便局に用事があったので、シニアカーに乗って出かけた時のことでした。その日、建物の中はとっても混んでいまして、長い行列が出来ていたのです。ロープに沿って最後尾にたどりつくには、狭い通路を苦労してシニアカーを操作しなければなりませんでした。すると、その様子を見ていた人が大きな声で皆に呼びかけてくれたのです。「このご婦人を...
DEAR DIARY: アパートメントのエレベーターの中でたまたま耳にした会話。男性が二人。それぞれ犬を連れている。コリー犬を連れた男: 「この子はもう14歳になるんですよ。ずい分、年とっちゃったなと思いますね。元気ないし、足元がおぼつかないし、耳もなんだか遠くなったみたいで・・・」ラブラドールを連れた男: 「なんとまあ、そいつはどうも他人事とは思えんな」コリー犬の男: 「そうですか?そちらの犬は何歳なんですか...
Dear Diary: アッパー・イースト・サイドのスーパー。グリーティング・カード売り場にて。60歳は過ぎているだろうと思われるご婦人が、結婚記念日用のカードをあれこれと熱心に探していた。売り場のもう一方の端から、同じような年配の紳士が、やはりカードを丹念にチェックしながら近づいてきた。ご婦人は何気なくそちらに目をやると、「まあ、なんてこと!」といきなり声をあげた。驚いた男性は目を丸くして、後ろに一歩、大きく...
DEAR DIARY: とても天気が良くてすがすがしい、絶好の散歩日和の日曜日。愛犬のパッジ(チべタン・テリア)を連れてリバーサイド・パークに向かった。ウェスト・エンド・アベニューを南に歩きはじめると、あんまり天気が良くて気持ちがいいので、パッジも私も自然に軽快な足取りになってくる。パッジはもう12歳になるし、私は52歳だということをすっかり忘れさせてくれるほど、身も心も軽やかだ!しばらくすると、前方に若い父親が...
Dear Diary:ハンター・カレッジのそばの交差点(レキシントンアベニューと68番通りの角)で、一人の老紳士が信号待ちをして佇んでいました。かなりお年をめしているようでしたが、身ぎれいな着こなしに、よく手入れされたあごひげが似合っていました。そこへ、とてもきれいでチャーミングな女子大生が歩み寄って行って、右手をのばして老人の左腕を支えるように添えました。老紳士は、「おやおや、これはどうも、デートにでも誘っ...
DEAR DIARY: マンハッタンに車で出かけて便利で安い駐車スペースを探すのはものすごく大変なことです。そこでニューヨーカーは色んな工夫をすることになります。でも、元マンハッタンの住人で、今はコネチカットに住んでいる私の友人夫婦ほど変わった方法を使う人は見たことがありません。先日、その夫婦やほかの仲間と一緒にアッパーイーストサイドのレストランで食事をして、帰りに車で送ってもらうことになりました。どこに車を...
DEAR DIARY: ある晴れた日にリンカンセンターのそばのカフェでコーヒーをいただいていました。お店の前のテラスで椅子に腰かけて、暖かい陽射しがとても心地よく感じられました。近くのテーブルに三人連れの女性客がいて、そのうちの一人が私の方を向いて、とてもお元気そうでいらっしゃって素晴らしいことだわ、と声をかけてくれました。私はありがとうとお礼を言って、ただぼんやりと昔のことをあれこれと想い出しながら、80歳の...
DEAR DIARY: バスの中で携帯電話を使う連中の無神経さにはもう我慢ならない、今度そんな場面に出くわしたら、ガツンと言ってやろう・・・、と思っていた。2月の大雪の降った日の翌日、アベニュー・オブ・ディ・アメリカスのバス停からバスに乗った。しばらくすると14丁目のバス停から若い女性客が乗ってきて私の後ろの席に座った。そして、座ると同時に携帯電話をかけ始めた。私は彼女をに向かって何か一言言ってやろうと身構えた...
Dear Diary:友人のお葬式に出席するためにタクシーに乗ったときのことです。運転手さんはその季節のご挨拶、「メリークリスマス」と声をかけてくれたので、私も丁寧にご挨拶をお返ししました。そして、家族とお住まいですか、と尋ねられたので、いいえ、私はひとり住まいですとお答えしました。すると運転手さんは自分もひとり住まいで、誰か一緒に暮らしてくれる人を探している、よかったら自分と一緒に暮らしませんかともちかけ...
Dear Diary:メディケア(65歳以上の高齢者のための医療保険制度)の加入資格をみたす誕生日が二ヶ月後に近づいている、そんなある日、用事があって地下鉄に乗って出かけた。その電車には自分も含めて大勢の乗客が乗り込んで、座席はあっという間に埋まってしまった。そこにポツンと一つだけ空いた席があって、その近くに立っていた30歳前後の若い男が私の方を向いて「こちらへ座りますか?」と尋ねた。私は自分に話しかけられたと...
DEAR DIARY:マンハッタンのアップタウンを走るバスの中で、私はぼんやりと窓の外をながめていました。乗ってきたばかりの乗客がバスの通路を奥の座席に向かって進んでいたのですが、突然、老齢のご婦人が立ち止まって、大きな声をあげました。「あら、主人を忘れちゃったわ!」窓の外を見ると小柄な老人が手を振りながら息を切らせて走っています。バスの中の乗客は皆(笑いをこらえながら)運転手の方を見ました。運転手は笑いな...
Dear Diary:今年70歳になる私の母のお話です。二年前のバレンタインデーの日のこと。ブルックリンの駅から地下鉄に乗って仕事に通っている母は、いつものように高齢者割引のメトロカードを使ってホームに進みました。すると、若い警察官が母を呼びとめたのだそうです。「失礼します。身分証明を拝見できますか?」と尋ねる警察官。「私のIDを見たいなんてどういうわけかしら?」と聞き返しながら、大きなバッグの中から財布を引...
DEAR DIARY:その日私は iPod で音楽を聞きながら、いつものようにリバーデールのスーパーで買い物をしていました。後ろから誰かが肩をたたいたので振り向くと、70代くらいのご婦人が iPod を持って笑顔でたたずんでいました。「何をお聴きになってらっしゃるの? あなたが iPod を聴きながら買い物なさってるから、私も真似してみたの」「Black Eyed Peas(LAで活躍するヒップホップの有名バンド)です」「あら、私も大好きだわ...
Dear Diary:私はコネチカット州のニューロンドンに住んでいる。年に一、二回は車で三時間ほどドライブして、マンハッタンの自然博物館を訪ねるのを楽しみにしている。数年前の夏、ガールフレンドと一緒に博物館へ向かっていた時、セントラルパークのあたりで道に迷ってしまった。地図を出して道を確認していると、公園の歩道を見なれた人が歩いているのが目にとまった。私の母だった。「母さん!」と声をかけると「ハロー、ノーマ...
Dear Diary:日曜日の午後、ユダヤ博物館を訪れた時に目にした光景です。とてもきちんとした身なりで、髪型も丁寧に整えられた、おそらく70代くらいの女性が、館内のソファに一人で腰かけていました。彼女は携帯電話を使っていました。警備員の一人が近づいて行って、携帯電話は使用禁止であることを彼女に告げました。彼女は少し憤慨した様子で、警備員を見上げて言いました。「話しをしているわけじゃないのよ。ただ、聞いてるだ...
Dear Diary:その日私はブロードウェイの68丁目にあるソニー・シアターでチケット売り場に並んでいました。話題の映画の封切初日だったので、チケット売り場の行列はいつもより長くなっていました。ようやく順番が近づいてきた頃になって、私の前に並んでいた女性(80代に見える老女)が急に何か慌て始めました。一体どうしたのかと思っていると、どうやら財布を家に置き忘れてきてしまったらしいのです。それでとても困り果ててい...
Dear Diary:ある日、ヨークアベニューで57丁目行きのバスに乗ったときのこと、またも、高齢者用のメトロカードを自動改札機に通すのを失敗した。バスの運転手は親切な男で、私の乗車カードを手に取って反対向きにして、もう一度やり直すよう手渡してくれた。どうして私はこの簡単なことがマスターできないのか座席について私は考え込んだ。そんなにしょっちゅうバスを利用する訳ではないので、ただ慣れていないだけかも知れない。...
Dear Diary:真夏の炎天下、私はリバーサイドドライブ88丁目のバス停で、汗をぬぐいながらバスを待っていました。バスはいつもよりかなり遅れていました。待てど暮らせどやってきません。バス停に並ぶ私たちは傍目から見てもよく分かるほど、皆んなイライラしていました。もういい加減あきらめようかと思い始めたちょうどその時、色鮮やかなサイクリングスーツに身をつつみ、ヘルメットをかぶった60代くらいの女性が、サイクリン...