fc2ブログ

Entries

見えない!

Dear Diary

私は精神科の医師である。事件を起こして入院している未成年者に対して、当局から依頼されて診察を行うのは、決して楽しい仕事とは言えない。幸いにして、先日診察した少年はベッドの上で落ち着いた様子だった。ベッドの横には少年の母親が椅子に腰かけていて、熱心に編み物をしている。私は病室のドアを閉めて少年の前に進み自己紹介を兼ねた挨拶をした。少年は真っ直ぐ私の顔を見ると、突然部屋の外まで聞こえるような大声で叫んだ、「見えない! 見えないよーーー!!」 私はかつてこれほどまでに劇的な「ヒステリー盲」の症状を示す患者を見たことがない。内心とは裏腹に、何気ない風を装って母親に尋ねた、「どのくらいこういう状態が続いているんですか?」 すると母親は編み物の手元から目を離すことなく、静かに返事をした。「先生がそこのテレビの前に立った時からだわね」

Isaac Steven Herschkopf, M.D.

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
訳者注:
ヒステリー盲(hysterical blindness):解離性障害(ヒステリー)のうち、視覚に障害があらわれるもの。
関連記事
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://metropolitandiary.blog129.fc2.com/tb.php/391-5728ddb2

トラックバック

コメント

[C66]

とても楽しく読ませていただきました。ありがとう!
  • 2014-07-05 09:05
  • hana
  • URL
  • 編集

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

metro

Author:metro
metro172をフォローしましょう
にほんブログ村 海外生活ブログ ニューヨーク情報へ
人気ブログランキングへ
Click here ↑↑ everyday. Thanks!!

当ブログはリンクフリーです

最新トラックバック

検索フォーム

QRコード

QR