DEAR DIARY:
妻と二人でクリスマスの飾りつけが目立つ五番街にショッピングに出かけた。一通り買い物を済ませた後、バス停で帰りのバスを待っていた。ふと気がつくと近くの建物の入り口にサンタクロースが立っている。例の衣裳に、白いひげを生やして、行き交う人々に声をかけて一緒に写真を撮りませんかと誘っている。子供連れの家族がその声に応じて一緒に写真を撮っている様子をながめていたら、そのサンタが我々に気がついて、一緒に撮りませんかと声をかけてきた。いくらですか、と尋ねると、僕のカメラを使うのなら5ドル、彼のカメラを使うのなら10ドルだという。なるほど、それで何の気なしに、どこかの団体か何かに属しているんですか? と聞いてみると、そうではなくて、全く個人としてやっているのだと言う。障害者年金だけでは足りないので少しでもこれを生活の足しにするのだそうだ。そしてさらに、「営業許可など持っていないので、時々、警官に追い立てられたりする」「この白いひげはわざわざ染めたものだ」などとも付け加えた。
バスはいつまでたってもやって来そうにないので、そのサンタは何とか私たちに写真を買わせようとあれこれ話を続ける。私はそんな気もなかったので、そろそろ潮時だと思い、彼に、すまないね、僕らはジューイッシュなんだと言った(本当は違うけど)。すると、サンタは、間髪いれずに、自分もジューイッシュだ! と大きな声で言った。それからヘブライ語で高らかと祈りの言葉を発してみせた。ラビは彼がサンタの格好をするのを好ましくないと思っているそうだが、彼は、別にかまわないと思っている、だって子供たちが喜ぶんだから、と言った。
ようやくバスがやってきた。僕はサンタに「Good luck and Happy Hanukkah(ハヌカ)!」と声をかけてバスに乗り込んだ。バスの中で僕は妻にこう言わずにいられなかった、「驚いたね、いくらニューヨークだからって、こんなこと作り話にも思いつかないよ!」
Jerry Bilinski

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訳者注:
クリスマスといえば、キリストの降誕祭のこと。つまりこれはキリスト教の教義にのっとった祝祭の一つです。ニューヨークに多いジューイッシュはもちろんユダヤ教徒ですから、キリストの誕生日を祝うということはありません。しかもジューイッシュの皆さんは、我々日本人ほど融通無碍でもないので、「メリークリスマス」とはやはり言いたくないようで、たまたま同じ頃に重なるユダヤ教の祝祭、
ハヌカを祝う、「ハッピー・ハヌカ」という言葉を好んで用います。一方が、「メリークリスマス!」と声をかけて、相手が、「ハッピー・ハヌカ!」と返事をするというようなこと(ちょっと気まずいですよね)もあるし、そういう余計な気遣いを避けるために、初めから宗教フリーの言葉として「ハッピー・ホリデー!」を使う機会がふえてきているようです。
参考:「
Happy Holidays」 という挨拶についての賛否両論
Advocates claim that "Happy Holidays" is an inoffensive and all-inclusive greeting that is not intended as an attack on Christianity or other religions, but is rather a response to the reality of a growing non-Christian population.
Critics of "Happy Holidays" generally claim it is a secular neologism. The greeting may be deemed materialistic, consumerist, atheistic, indifferentist, agnostic, politically correct, and/or anti-Christian. It may be associated with the "War on Christmas," with the intent of deliberately diminishing the centrality of Christianity and advancing secularism.
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