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Just another day in New York

Dear Diary:

さわやかな風が吹き渡る去年の秋のある日の夕方のこと、家内と私は五番街を歩いていて、一羽のカモメが悠然と胸を張って歩道を歩いているのを見た。すると突然、何を思ったのか、そのカモメはこの夕方のラッシュアワーで混み合っている大通りを横切ろうとして、車の洪水の中に突き進んで行ったのだ。私は思わず声をあげた、カモメは何とか最初の一台はかわしたものの、二台目の車にはねられた。まるで、パンチドランカーになったボクサーのように必死で立ち上がり、ヨタヨタと足を引きずりながら、また通りの反対側を目指して進み始めた。このままでは間違いなく最悪の結果になりそうだ。これ以上この様子を見ていられない。私はこのカミカゼ・カモメに駆け寄った。震えている。一生懸命羽ばたこうとしている。飛んで逃げようとしているのだろう。だが翼は折れてしまっていて、むなしく地面に触れたままだ。そっと抱き上げると鋭い目つきで私をにらみ、指に噛みついた。車を避けながら歩道に戻ると、様子を見ていた人々の輪が出来た。

311番(ニューヨーク市の何でも相談窓口)に電話してくれた人がいる。しかし自殺志望のカモメに対応してくれる係はなかった。犬を連れて散歩中の若い女性は、彼女の知っているウェストサイドの獣医ならカモメも診てくれるはずだ、と教えてくれた。二人連れの老婦人は是非タクシー代に使って欲しいと言って私に20ドルを受け取らせた。いくら断ってもきかなかった。タクシーの運転手は当惑しきっていた。こんなに甲高い声で鳴きわめく乗客を乗せたのは多分初めてだったのだろう。タクシーから降りる段になってドアを開けると、このクレイジー・カモメはひときわ高い声で誇らしげに一鳴きしたかと思うと、再び私の手に噛みついて道路に飛び出した。西86番通りというマンハッタンの中でも美しいこの並木通りを敢然と横切って行こうとするのだ。こいつ、魚雷にでもなったつもりなのか! 私は大声を上げて通りの車を制しながらカモメの後を追った。何とか捕まえて、抱き上げた。大きく息を吐いて、ここは厳しく接すべきところだと考えた。カモメのしつけ方など聞いたこともないので、かねて覚えのある犬のしつけのノウハウを応用することにした。仰向けにそっと地面に押しつけて「悪い子だ!! 二度と噛むんじゃない!!」と大声で言ってやった。

ようやくコロンバス・アヴェニューにある「野鳥保護ファンド」のオフィスに着いた。ここは怪我をしたりして保護が必要な野鳥に治療やリハビリテーションを施す団体の施設だ。担当のリタ・マクマホンさんによるとこいつは1歳のセグロカモメ(herring gull)で、ここにやってきたのは今週に入って二羽目だという。

こうしてこのクレイジー・カモメの翼は無事治療されることになった。私のポケットにはタクシー代のお釣り12ドルが残った。 建物の外は、普段と変わらぬニューヨーク、そんなある日の出来事だった。。。

George Klas

Herring-Gull.jpg
herring gull

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訳者注:
最後の締めの文句がかっこいいですね。原文はこうです、「Crazy bird’s wing is mending, and I made $12 on the cab ride.  Just another day in New York.」
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