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おとなの楽しみ

Dear Diary:

私は、ごく普通の、ある年齢に達した女性です。先日、コロンバス・アヴェニューでバスに乗りました。セントラル・パーク西のバス停で似たような年齢に見える男性が乗って来て、たまたま空いていた私の隣りの席に腰掛けました。その男性は席につくなり、「天気予報で言ってたよりもずっと寒いですな」、と話しかけてきました。続けて、「まあ、こんな寒い日は、さっさと用事を片づけて家に帰って、暖かいウィスキー・トディでもやるのが一番だ」とつけ加えました。私は、「そうですね、でも今どき、ウィスキー・トディとか、知らない人の方が多いと思いますよ」と応えました。男性はうなづきながら、「砂糖、レモン、熱いお湯、それにウィスキー・・・」と、レシピを唱えだしたので、私は、「ごめんなさいね。私はウィスキーは飲めないの。気分が悪くなってしまうものですから」と言いました。すると、その人は「そりゃ、大変だ、しらふでいるよりももっと悪い!」と大げさに驚いてみせるのです。なんだかカチコチの禁酒主義者と思われるのも嫌だったので、「でも、ウォッカは好きなんですよ。ウィスキーが苦手なだけなんです」と言うと、少しは見直してくれたようで、おもむろに威儀を正してこう言いました。「私はジンだな。ジンをよく飲むんだ。それもピンク・ジンをね」 そこで私もきちんと向き直って応えました、「それは甘過ぎて私はダメ、前にカナダで飲んだことあるのよ。グレナディンで作ったやつでした。甘過ぎてとても飲めたものじゃなかったわね」 「グレナディン?! そりゃ、駄目さ!」彼は声をあげました。「私の言うピンク・ジンというのはだね、アンゴスチュラ・ビターズで作るんですよ!」

五番街のバス停に近づいてきたので、席から立ち上がろうとすると、彼は「まだ、早いですよ、危ないからバスがちゃんと停まるまでここでお待ちなさい」と言って、「本物の」ピンク・ジンの作り方を懇切丁寧に教えてくれました。バスが停まると先に立ちあがって私を通してくれて、私は手を振って挨拶しながらバスを降りて行きました。

アパートメントに戻ると、早速スーパーに出かけてアンゴスチュラ・ビターズを買ってきました。寒い外から戻って、暖かい暖炉の火の前で、椅子に腰かけて初めて作ったピンク・ジンのグラスを傾ける。何だかとても心地良い気分に包まれました。私の子供たちはお酒といえばワインしか飲みません。こんな年齢に達した見知らぬ同士の男女があんな風に言葉を交わすことができて、しかも若い人たちの知らないような楽しみを実は知っているなんて、あの子たちにはきっと想像もつかないんだろうと思います。

Barbara Adams

pinkgin.jpg
Pink Gin: カクテルの一種。ジンにアンゴスチュラ・ビターズを加えたもの。

whiskytoddy.jpg
ウィスキー・トディ(Whisky Toddy): カクテルの一種。ウィスキーのお湯割りに砂糖を加えたもの。

Angostura_Bitter_.jpg
アンゴスチュラ・ビターズ(Angostura bitters): 香草、薬草系のリキュールで独特の苦みをもつ。様々なカクテルの味付けや香り付けに利用される。

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グレナデン(grenadine): ザクロの果汁に砂糖を加えたシロップ。カクテルの材料として使われる。
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