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自転車泥棒

Dear Diary:

霧のたちこんだある朝早く、ソーホーにある私のアパートメントから愛犬のゴールデンリトリーバーを連れて散歩に出かけた。しばらく行くと通りの反対側で体格のいい大男が自転車を盗もうとしているのに出会った。薄暗い早朝の霧の中で、その男はいかにも悪党という感じでちらとこちらを見やった。私の愛犬アッシュレイは、知らない人に出会うと唸ったり吠えたりするかわりに、愛想良くすり寄って行くタイプなので、ヒモを引っ張って距離を確保しながら、その男に声をかけた。

私:「どうして自転車泥棒なんかするんだ? やめてくれないか。私はこの近くに住んでるんだ。とても見過ごせない!」

自転車泥棒:「うるせえ! これは俺の仕事だ。盗んだ自転車を売って金にかえるのさ。カネが要るんだよ。ほっといてくれ!」

私:「その自転車、そのままにしておいてくれ。頼むよ、ほんとに。感謝するから、な、いいだろ」

自転車泥棒:「悪いな、そうはいかんよ。こいつはいただきだ!」

私:「一体、いくらでそれを売るつもりなんだ?」

自転車泥棒:「40ドルだな」

私はしばらく男の後をついて行ってなんとか説得を試みたが、無駄に終わった。

翌日の午後、息子のピーターとグリニッジ・ヴィレッジを歩いていたら、大通りの角で前の日に出会ったあの大男とまた出会った。男は自転車を売っていた。よく見ると昨日の自転車とは違う自転車だ。明るい午後の陽射しの中で、男の態度はとてもフレンドリーで、やけに愛想よく道行く人々に声をかけている。これが昨日、私の出会ったあの迫力満点の男と同一人物とは思えないほどだった。

自転車泥棒:「だんな、この自転車、35ドルですよ。どうですか?」

私:「私のこと、覚えてないのかい?」

自転車泥棒:(しばらく間があって)「ああ、昨日、でっかい犬を連れてた、思い出しましたよ!」

私:「そうそう、あの時の私だよ。どうして君はこういうことするんだ?」

自転車泥棒:「それはあっしがジャンキーだからでさあ。25の時からずっとジャンキーなんでね。今、45だから、30年間こうやって生きて来たってわけでさあ」

息子のピーター:「今45歳っていうことは、30年じゃなくて、20年だと思うけど・・・」

自転車泥棒:「おお、坊や、そん通りだ。だから言うんだ。ちゃんと学校行けよって、な、ドラッグなんか絶対やるんじゃないぞ。そうでなきゃ、俺様みたいなジャンキーになっちまうってわけだ。いいか、しっかり勉強するんだぞ。ちゃんと学校に行くんだ。自転車は欲しくないか? お前さんなら30ドルで売ってやるぞ。出血大サービスだ!」

その晩、妻のリンダにこの話をして聞かせた。その男の態度が昨日と今日とで大違いだったことに驚いたよと言うと、実にシンプルな解説をしてくれた。「あなたがその人に最初に出会ったときは、彼は『仕入れ』の最中だったのよ。そして今日は『営業』の真っ最中だったというわけね」

エピローグ:
それから一月ほど経ったある日、ハドソン・リバー沿いに自転車に乗って一回りして家に帰る時に、パトカーが通り過ぎて行くのを見かけた。パトカーの後ろのトランクは半分開けっぱなしになっていて、一台の自転車が乱暴に積まれている。後ろの座席で警察官の隣りに座って、手錠をはめられたまま、窓の外を半ば笑顔で気持ちよさそうに眺めているのは誰あろう、例の愛想のいい近所の自転車泥棒の男だった。

Barrett Z. Gross

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