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バス友達

Dear Diary:

西57番通りのアパートメントから42番通りのオフィスまで、毎朝バスで通っていた頃の話です。ある日の朝、とてもチャーミングなお年寄りの女性と隣りあわせて座席に座りました。小柄な身体に長い銀色の髪をして、まるで天使のように愛らしい笑顔で挨拶してくれたのです。つややかに光る淡いピンクの口紅が、これまた素敵だったので、「その口紅、とてもよくお似合いですね」と言うと、「まあ、あなた、私、この口紅と同じものをもう何年も昔からずーっと使ってるのよ。気に入っていただけて嬉しいわ」という返事を返してくれました。

その日の帰りのバスで偶然またその女性と一緒になりました。今度はご主人とお二人でした。ご主人は物静かな方でしたが、奥様のことをとても大事に思っていらっしゃることがよく分かりました。奥様は私を見るなり、とびきりの笑顔で「まあ、あなたじゃない!」と声をかけてきました。こうして私たちはバス友達になったのです。

このご夫婦は二人とも42番通りにある職場で働いているのだそうです。バスで一緒になると、いつも三人並んで腰掛けました。ご主人はずっと静かにしていましたが、私と奥様はお天気のこと、家族のこと、それにお仕事のことなど、それこそ何でもお構いなしにおしゃべりしあったものです。彼女に出会うとまず最初に、口癖のように「まあ、あなた、ごきげんいかが?」と言って話しかけてくるのが常でした。

ある日の朝、ご主人が一人でバスに乗ってきました。奥様はどうしたんですかと聞くと、その日は用事があって、いつもより早いバスで出かけたということでした。「奥様って、ほんとに素敵な方ですよね」と話しかけると、ご主人は目を輝かせて「ああ、その通りさ。でもね、君、ほんとは50年前に彼女に出会っておくべきだったよ。家内はジャズ・シンガーでね。そりゃあ、本当に綺麗だったんだよ!」と言うのでした。

こんな風にして私たちのバスの中でのささやかな交友は暫くの間、楽しく続いていたのですが、やがて私が仕事を失ってしまって、バスに乗る機会が減ってしまい、お互いほとんど会うこともなくなってしまいました。それでもたまに出会うことがあると、彼女は以前と変わらぬ素敵な笑顔を見せて、「まあ、あなた、ごきげんいかが?」と声をかけてくれるのです。

つい先日のことでした。アパートメントの近くのスーパーで買物をしていたとき、彼女のご主人がレジの列に並んでいるのに気が付きました。ずい分久しぶりだったので挨拶すると、それには答えないで、真顔でこう言ったのです「家内はね、先月、死んだんだ。ガンでね。うん、肺ガンだったんだ。タバコなんか一本も吸わないのに!」 これには驚きました。ものすごいショックでした。私はすっかり動揺して「彼女のこと、大好きだったわ」というのが精一杯でした。ご主人は、「そうだよね。ありがとう」と悲しげにつぶやきました。ご主人の頬にそっとキスをして、私は身をひるがえしました。こぼれる涙が見えないように。

お店の出口を出るときに、ふと気が付きました。あの愛らしくて小柄なご婦人と知り合ってもう何年にもなるのに、私は彼女の名前すら知らないんだということを・・・。

Felicity Dell'Aquila-Geyra

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