Dear Diary:
去年、クリスマスの日の何日か前に、アップタウン行きの電車に乗っていたときのことでした。ウェスト・フォース・ストリートの駅に着くと、一人の若い男の子が大型のステレオラジカセを持って電車に乗り込んできました。車内の乗客に向けて彼は大きな声で元気よくこう言いました。「おいらは今夜は面倒な事にはかかわりたくないんだ。だから、ここでみんなにダンスを踊ってみせるよ。俺たちがいつもブロンクスでやってるやつだ!」
車内の殆どの人が知らん顔を決め込んでいました。それにはちっともかまわずに、その子はiPhoneのコードをラジカセに接続して音楽を流して、それに合わせて一心不乱に踊り始めました。それがどんな踊りだったかというと、途中で何度もバク転するし、手すりを利用して空中ブランコのような動きをしたり、片腕一本だけ床の上について身体をくるくる回したり、何という名前の踊りかは知りませんが、それはもう見事なものでした。最初と違って車内の乗客の目はこのすごいダンサーに釘付けです。私の隣に座っていた少年は、もうたまらないといった感じで、「ウワー、ほんっとに、すごいや!」と叫んだくらいです。もちろん見ていたみんなが同じように感じていたのは間違いありません。
ダンスを終えてその若者が容器を手にしながら車内を回った時、ほとんどの乗客が笑顔で小銭を入れました。
ちょうどその時でした。隣の車両からホームレスらしき老人がこちらの車両に入ってきて寄付を求めるお願いを始めたのです。その人の服装は粗末で髪はボサボサ。ダンスを踊ってみせたり、音楽を演奏したりということもなく、ただ、人々の好意にすがって、逆さにした帽子を差し出す(中に小銭を入れてくれということ)だけでした。けれども、そばを通り過ぎた時にちらっと見えた帽子の中は空っぽでした。
電車がちょうど次の駅についてドアが開くと、ダンスの若者が勢い良く座席から立ち上がって、真っ直ぐそのホームレスの老人に近づいて行きました。そしてついさっきダンスを踊った後に皆から集めたお金をそっくりそのまま老人の帽子に放り込みました。若者は大きな声で、「おっさん、メリー・クリスマス!!」と言い残すと、そのまま電車を降りて行ったのでした。
Christina Daigneault


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
訳者注:
「ステレオラジカセ」と訳したのは原文では「boombox(ブームボックス」です。そう言えば「ラジカセ」の「カセ」は「カセットテープ」の「カセ」なわけですから今時それは有り得ないわけで、もはや「ラジカセ」といのは死語なのかと、この方面に疎い私にはため息ものです。では「ブームボックス」とすれば良かったのでしょうか?これで皆さん分かるのかな?私は今回初めて知った言葉です。日本語として定着してるのかどうか、よく分からなかったので、昔懐かしい「ラジカセ」を使ってみた次第です。
ちなみにこの若者が電車の中で見せたダンスの妙技、一体どんなのだったのでしょうか? いつも拝見しているニューヨーク情報ブログ「ニューヨークの遊び方」の
「Dance like there's nobody watching…」に紹介されていたYoutube動画を貼り付けておきます。ご参考まで、
「Dance Like No One Is Watching! :傍若無人、ただ踊れ!」
- 関連記事
-
- http://metropolitandiary.blog129.fc2.com/tb.php/728-1439be1c
トラックバック
コメントの投稿