January 15, 2013
Beware Wet Paint
By STEFANI JACKENTHAL
Dear Diary:
アッパーウエストサイドのアパートメントのエレベーターの中。洗濯物をいっぱいためてしまった私は、これ以上入らないくらいに膨らんだ大きな洗濯物袋を引きずりながら、地下のコインランドリーへと向かった。乗り合わせた同じアパートの住人が、「地下室の床、塗り替えたばかりみたいだから気をつけた方がいいわよ」と声をかけてくれた。
その人はロビーで降りた。私は一人で無人の地下室まで降りて行き、注意書きに眼をとめた。「ベビーカー、または手押し車での入室禁止」と書いてあった。歩いて中に入ることについては何も書かれていなかった。磨かれた鉄のように光る灰色の床には、物置場の方から続く四角いプラスティック製のブロックが、地下室の中を横切るようにして並べられていた。ここでちょっと立ち止まって、重たい洗濯物袋を持ち上げて、鈍く光るコンクリートの上に足を踏み出した。すると、あっと思うまもなく、塗りたての床に足を取られた。
エレベーターの扉が閉まる。サンダルを履いていた足をあわてて床から引き上げる。足に灰色のペイントがたっぷりくっついている。もう一方の足をプラスティックのブロックの上に乗せてバランスをとった。洗濯物袋の底をもう片方の足で支えながら、なんとかエレベーターのところまで戻らなければいけない。まったく、ほんとに、とんでもないことになってしまったと思った。
エレベーターの扉が開くと、中には大きな黒い長い毛をした三匹の犬を連れた男性が乗っていた。私はかまわず洗濯物袋をエレベーターの中に放り込んで、ちょっとこのまま扉を開けたままにしておいてくださいとお願いした。そのときの私は塗りたての床に片足のサンダルを取られて、裸足のままもう一度その床に足を突っ込んでしまった後で、それはみじめな姿だった。でもその人はそんな私をただ無言でながめていた。
扉を開けておいてもらっている間にサンダルを取りに戻った。床から持ち上げるとそこの部分の塗料が一緒にとれてジグソーパズルのピースが欠けている跡みたいになってしまった。
エレベーターの中で、洗剤と、塗料で汚れたサンダルと、コインランドリー用に持ってきた何枚かのコインを手にして、片足で立ったまま、肩を落としてつぶやいた。「あーもう、信じられない。とんでもないことになっちゃたわ。管理人さんに殺されちゃう!」
すると犬を連れた紳士、少しも表情を変えずに、ちょっと肩をすくめてこう言った。「ま、ただの床ですからな!」
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