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どこまで?

May 1, 2013
An Attempt at a Good Deed
By CLAUDIA GRIESBACH-MARTUCCI


Dear Diary:

24番通りと八番街の角で、目の不自由なお年寄りが、「誰か手を貸してくれんかねー」と声をあげました。歩道が工事中で回り道をしなきゃいけないようになっていたのです。たまたま私は近くを歩いていて、それで、何のためらいもなしにそのおじいさんの腕をとって付き添ってあげることにしました。人助けの気持ちが先走ったのね。そのとき自分が夕べの乱痴気パーティーのド派手な服装のままだということをすっかり忘れてました。紫と青の、お尻が半分見えそうなくらい小さなリップドデニムに、「I NY」のロゴ入りハーフトップでおヘソ丸出しというファッションでした。

回り道は迷路のように曲がりくねっていて、一緒に歩いている間じゅう、おじいさんは乾いた唇から息を吐きながら、ほとんど聞き取れないくらい小さな声で「ありがとう、ありがとう」と繰り返してました。ようやく迷路の出口を出て25番通りにたどりついたので、「オーケー、おじさん、ここまでくればもう大丈夫ね。」と言って肩をたたいてお別れしようとしたら・・・。

「27番通りじゃよ。27番通りまで行かなきゃならんのだよ」とおっしゃるのです。

私が乗る電車の出発時刻まで、あと20分。私たち二人の歩くスピードはカタツムリよりも遅い。しかし、しかーし、私の中で、道徳を重んじる心が合理的な判断を打ち負かしたってわけです。「オーケー、分かったわ。27番通りね」

そうしてまた一緒に歩き始めると、道行く人がみんな私たちのことをじろじろ見るんです。奇妙なカップルだから。薄手の上着から肌が透けて見えるし、そんなに見られると気になるじゃないですか。とにかく全然見ず知らずのこの老人と身体をぴったりと寄せ合って歩いているもんだから、体臭と口臭がひどくて、吐き気がしそう。この人、もし眼が見えてたとしたらどうするの~って感じでした。

ようやく27番通りについて、ほっとして、「さ、着いたわよ、おじさん」と告げました。そしたらなんと「五番街、ここから五番街まで頼むよ」と言われたの。これじゃ約束違反だわね。

「おじさん、よく聞いて。さっき27番通りまでって言ったでしょ。もう大急ぎで行かなきゃ、私、電車に乗り遅れるわ!」

私はそう言ってその場を立ち去りました。そのとき、ああ、私はもうガールスカウトじゃないんだなあ、とあらためて感じてしまいました。足早にその場を離れて行く私の後ろの方から、あの老人の声が聞こえて来ました。「誰か手を貸してくれんかねー」

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