May 8, 2013
A Corporal’s Taxi Ride
By VICTOR WASHKEVICH
Dear Diary:
38年間もマンハッタンのミッドタウンで働き続けていれば、タクシーに乗っていて不愉快な思いをしたことも少なくない。そんな時私は目をつぶって、はるか昔のある日の出来事に思いを馳せることにしている。
それは1951年の6月のことだった。当時軍隊に所属していた私は久々に休暇を与えられて、マンハッタンの家へ帰る途中だった。軍服姿のまま荷物を抱えてラガーディア空港に着いたのは深夜だった。ここからマンハッタンまでタクシーに乗って行くというのは駆け出しの下士官の安月給では無理というものだ。とりあえずタクシーには乗り込んだが、運転手が「どちらへ?」と聞くと間髪入れずに、不遜な態度でこう応えてやった。「ああ、どこでもいいから一番近くの地下鉄の駅までやってくれ」
運転手は大いに面食らったようだったが、私はさらに調子に乗ってこう付け足した。「俺はマンハッタンに住んでるんだ。軍隊は安月給だからな。休暇中の小遣いを減らしたくないのさ」
運転手は妙な唸り声をあげてメーターを倒すと、車を急発進させた。猛スピードで走りながら通りに面した地下鉄の駅を次から次へと素通りしていく。これには驚いた。声も出せなかった。メーターはどんどんあがっていく。手持ちのわずかばかりのお金が無くなってしまう・・・。
ついにマンハッタンに入った所で運転手が振り向いた。そしてにやりと笑いながらこう言った。「肝を冷やしてたんじゃないか? え、どうなんだ? まあいいさ、実はな、わしのせがれもな、軍隊で頑張ってるんだ。それでな、お前さん、タクシー代が心配なんだろ? だったらよーく聞くんだ。俺はな、お前さんから一銭も受け取ろうなんて思っちゃいないのさ。」
あり得ない、今ではまったくあり得ないこんなことが、昔は本当にあったのだ!
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