May 15, 2013
A Window Concert in Brooklyn Heights
By MAGGIE LEVINEDear Diary:
自転車に乗って坂道を下る。上着なし。通りの木々に花が咲き誇っている。春は後戻りしない。この季節以上に心地良い季節はない。
通りの角を曲がってブルックリンハイツのレンガの壁の前までやってきた。建物の前の歩道には大勢の人が白い折り畳みイスを並べて腰掛けている。私の友達のエリカもそこにいた。信号待ちの車からわざわざ窓を開けて何ごとかとのぞいている人がいる。
通りの反対側にも人が集まっていた。本格的な自転車乗りの服装に身を包んだ幾人かがロードバイクをとめてサドルの前に身体をずらし、両脚を広げて地面に立っている。若い女性が彼氏に肩を抱かれて寄り添っている。とても幸せそうな様子だ。少し奇妙な金髪を普通以上に長く伸ばした年老いた女性が身じろぎもしないで立っている。ノルディック・ヒッピーのポロシャツを着た男の人がいる。この人、ブルックリンハイツの住人かしら? 今まで一度も見たことがないのはどうしてだろう?
この人たちみんなが正面の建物の、開いた窓の一つを熱心に見つめている。
ようやく分かった。窓から見えているのはアップライトピアノの裏側だ。たどたどしい和音の響きが聴こえてきた。どこかで聴いたことがある曲、クラシックでないのは確か。ポピュラー・ソングに違いないけど、いつ頃の曲か思い出せない。
これ、リサイタル?
よく見ると窓ガラスの端に張り紙がしてあった。
「第4回 窓際コンサート」
陽気で賑やかなその曲が終わると、みんな大きな拍手と歓声をあげた。すると一人の少年が窓から顔を出してお辞儀をし、また奥に引っ込んだ。あんまりその動作が素早くて、ほとんど顔を見ることができないほどだった。

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